なぜ神永とウルトラマンが入れ替わったことに周りは気づかないのか?-『シン・ウルトラマン』感想

アマプラで『シン・ウルトラマン』を観た。『シン・ゴジラ』のような緊迫感はないが、奇(外星)人変(外星)人観察日記のようなエピソディックな構成で楽しめた。気になったところをメモ。以下、ネタバレしてます。 ------------------------------------------…

(ネタバレあり) なぜロンドンだったのか-『ラストナイト・イン・ソーホー』感想

エドガー・ライト監督の『ラストナイト・イン・ソーホー』(2021)をアマプラで観た。以下、ネタバレあり感想です。 ------------------------------------------------ ダリオ・アルジェント監督のメジャーな作品の影響をかなり感じた。 ・ある職業のプロフェ…

(ネタバレあり)あいつはどうクズだったのか?-『六人の嘘つきな大学生』感想

浅倉秋成の『六人の嘘つきな大学生』(2021年、書き下ろし)を読んだ。 以下、ネタバレ感想。 --------------------------------------- IT企業スピラリンクスの最終選考まで残った6人が、震災を理由に内定者を1人まで絞ると宣告され、グループディスカッショ…

(ネタバレあり)原作アップデートとしての換骨奪胎と、瑕疵としての作品無罪論-映画『騙し絵の牙』感想

映画『騙し絵の牙』の感想です。原作と映画、ダブルでネタバレしています。ほぼFilmarksからの転載ですが、映画内の「作品無罪論」についてちょっと補足しています。 ------------------------- 塩田武士原作(2017年)からの改変ぶりが凄い。というか舞台とな…

(ネタバレあり)現実への秀逸なコメントとしての作劇とキャラクター造形の一貫性のなさ-『相棒』シーズン20元旦スペシャル「二人」感想

以下、『相棒』シーズン20元旦スペシャル「二人」についてのネタバレ感想です。 ----------------------------------------------- 録画視聴した元旦スペシャル「二人」の感想。 まず脚本からの改変について触れておきたい。脚本の太田愛氏のブログによると…

(ネタバレあり) 現状追認ドラマとしての『アバランチ』

以下、ドラマ『アバランチ』のネタバレをしています。 -------------------------------- タイトルは"Vigilante"(私刑を加える者)と"avalanche"(雪崩)をかけていたのだろうが、終わってみれば日本の現体制追認に終わる、とんだ腑抜けたドラマだった。 YouTub…

(ネタバレあり)男性原理と女性原理の相剋-『シン・エヴァンゲリオン劇場版』感想

Filmarksに書いた感想からの転載です。以下、全面的にネタバレしてます。 ---------------------------------- 「イスカリオテのマリア」の存在が面白い。みんなシリアスなのに一人だけノリが違ったり。エヴァに乗ることを仕事とか役目と捉えている感じで、…

(ネタバレあり)網戸を自力で直せる女-『大豆田とわ子と三人の元夫』最終話感想

今クール、最も夢中になって観ていた『大豆田とわ子と三人の元夫』が最終回を迎えました。 オダジョー演じる小鳥遊大史のターンで目まぐるしい感情のジェットコースターを経験し、「もう最終話は余生のような感じになるしかないだろー」と思いながら観ていま…

(ネタバレあり)大豆田とわ子の実験-『大豆田とわ子と三人の元夫』第9話感想

以下、『大豆田とわ子と三人の元夫』(以下、まめ夫)第9話のネタバレをしてます。 --------------- まめ夫の第7話、第8話をご覧になった皆さんがご存知の通り、小鳥遊という人物はビジネスとプライベートを峻別するという特性があります。ありました。それは…

(ネタバレあり)やせた土地と現実逃避としての「ストーリー」ー『ドリームランド』感想

Filmarksの試写で『ドリームランド』を観ました。 以下の感想はネタバレですので、未見の方は注意です。 - 不毛な土地で暮らす17歳の少年ユージンと、彼に匿われる負傷した女強盗アリソンの話です。この物語では、土地と個人が物語る「ストーリー」が非常に…

若冲と大典-『ライジング若冲』観ました。

録画していたNHKの正月時代劇、『ライジング若冲』を観ました。 芸術の追求を通じて繋がった絵師と僧侶の物語でした。 「あんたの絵を通して宇宙を、仏を見たいんや」と、若冲の手を握りしめて相国寺の有望な僧侶、大典が言います。それがプロポーズのように…

ふんわり彼氏と色彩の炸裂ーNHKドラマ『岸辺露伴は動かない』第三話「D. N. A」感想

NHKドラマの『岸辺露伴は動かない』第三話「D. N. A」を観ました。いやー、三話目にしてめちゃくちゃ「作画・荒木飛呂彦」な人が出てきましたね。 片平真依を演じた瀧内公美さんです。 線の太い顔と意志の強そうな眼差し、ポンパドールを2つ、センター分けに…

森山未來の身体表現ーNHKドラマ『岸辺露伴は動かない』第二話「くしゃがら」感想

NHKドラマ『岸辺露伴は動かない』の第二話、「くしゃがら」を観ました。行方不明となった担当編集者に渡された使用禁止用語リストに載っていた「くしゃがら」という言葉に取り憑かれた漫画家、志士十五を、森山未來が怪演していました。IKEAのショッピングバ…

高橋一生の頭の形は最高に岸辺露伴だった- NHKドラマ『岸辺露伴は動かない』第一話「富豪村」感想

2020年12月28日から三夜連続で放送される『岸辺露伴は動かない』の第一話「富豪村」を観たんですよ。 高橋一生って、あまり荒木飛呂彦の作画っぽくないじゃないですか。だから一抹の不安があったんですが、そんなのは登場して一瞬で吹っ飛びましたね。 高橋…

「ベルナール・ビュフェ回顧展 私が生きた時代」に行ってきた。

仕事の合間をぬって、Bunkamuraザ・ミュージアムで開催されているベルナール・ビュフェ回顧展に行ってきた。時系列的な作品展示で、若い頃の作品にはやたらと直線的な人体が蒼白色というか鉛色に塗られている、死体のような絵が続いていた。 しかしアナベル…

余白の勝機-『The Witch/魔女』感想

アマゾンプライムで『The Witch/魔女』(パク・フンジョン監督, 2018)を観ました。以下、ネタバレあり(ネタバレありき?)な感想です。 これ、めちゃくちゃ語るべき余白のあるお話ですよね。主役が8歳から19歳にジャンプする、オーディション番組でジャユンが…

漫画実写化邦画ベストテン

Washさんの企画「漫画実写化邦画ベストテン」に参加します。 washburn1975.hatenablog.com 1. 『ヒルコ 妖怪ハンター』(1991年) (原作者:諸星大二郎、監督:塚本晋也、主演:沢田研二)2. 『孔雀王』(1988年) (原作者:萩野真、監督:ラン・ナイチョ…

曖昧な存在に形を与えるものとしての愛-『本気のしるし』感想

『本気のしるし』をFilmarksのオンライン試写会で観ました。曖昧ですが最後の展開までネタバレしてます。未見の方はご注意。 愛することのないまま二人の女と関係を続けている優しいけれども残酷な男が、ひょんなことからある女を助け、そのままゴロゴロと坂…

背中の説得力-『ジュディ 虹の彼方に』

二人の子供たちとどさ回りで地方の舞台に上がり日銭を稼ぐオープニングから1947年のロンドン公演の合間に、MGMのプロデューサーやステージママによりコントロールされていた十代の挿話が入る物語構造である。 ジュディ・ガーランドは生涯五人の夫を持ったが…

金持ち一家と貧乏一家の違いは何か?-『パラサイト 半地下の家族』感想

貧乏家族と金持ち家族の対比は、まず自宅の描写からなされる。 繁華街の半地下に住む貧乏家族と、坂の上に住む金持ち家族。 トイレが目線の上にある半地下に住む家族と、自由な平面遣いのモダニズム建築に住む一家。 しかし思いの外、共通点もある。 どちら…

究極のメリトクラシー映画-『アド・アストラ』

地球外生命体を探しに行きそのまま戻らなかった偉大な宇宙飛行士を父に持つロイ。地球でサージと呼ばれる電気嵐が起こり、原因は海王星あたりで出発から16年後のいまも生存している父と聞かされる。彼を説得するために、自身も宇宙飛行士であるロイが派遣さ…

ループ物からパラレルワールド物へ-『ハッピー・デス・デイ・2U』

ループ物から平行世界物へ、物語の形式が移行している。ツリーの母親が生きている世界線で、ツリーが元の世界へ戻るかどうか葛藤する。 ホラーというより科学ミステリ。前作の謎が解明される。 前作で自分の恋人となったカーターがダニエルと恋人同士となっ…

イドリス・エルバの壮絶な無駄遣い-『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』

泣きたくなるほどのイドリス・エルバの無駄遣いだった。『ブレードランナー』のロイ・バッティ役だってできる演技力の俳優に、あんな深みのないアンドロイド役をやらせたのは大罪に値する。本人の演技も、ハリウッド大作向けらしく大味にチューンアップして…

ソロリティの凶暴さ-『ハッピー・デス・デイ』

誕生日の18日月曜日から抜け出せなくなるループ物。 ホラーというより、『バタフライ・エフェクト』のような因果関係を楽しむサスペンス映画だった。 アジア人に対する態度等、ツリーという白人女性の主人公が最初あまりにも性格が悪いので殺害されてもまっ…

舐めてた相手が殺人兵器でジャッキー-『ザ・フォーリナー/復讐者』

原作はStephen Leatherによる"The Chinaman"(1992)。 「舐めてた相手が殺人兵器」もの。殺人兵器の起爆剤が身内の女性の死というのは飽き飽きのパタンであるが、兵器を演じるのがジャッキー・チェンという点に新味がある。 観客はおそらくみな、ジャッキーが…

擬人化されたゴジラには魅力がない-『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』

人間に飼い慣らされたゴジラ、破壊者ではないゴジラは驚くほど魅力がなかった。 人間とモンスターの共生がテーマの一つ。 「モンスターの廃棄物を飼料に」と、巨大生物が資源循環型社会の一部になる。 オリジナルのゴジラにおける原爆や原発事故への怒りは跡…

クライマックスで黒マスクの妙味-『ザ・ファブル』

キレのあるアクションが凄い。ゴミ処理場のクライマックス約20分で、全身黒装束の岡田准一が黒マスクをずっと被っているのが偉い。顔が命と思われるジャニーズなのに偉い。掲載された雑誌がメディアに引用される際、ジャニーズタレントは黒抜きになったりす…

生き残った理由は運か、強さか?-『ウィンド・リバー』

自発的な選択と偶然性ということに関して考えさせられる。 ジェーンに対しコリーが最後、「君が生き残ったのは運じゃない。倒された者は弱かった。君は強かった。自分の力で生き残ったんだ」的なことを言うんだけど、最後にジェーンは「ナタリーは10キロ走っ…

静かな滋味あふれるギャング映画-『アイリッシュマン』

原作はCharles Brandtの"I Heard You Paint Houses"(2004)。 アイルランド系のトラック運転手フランク・シーランと、彼が殺し屋として仕えたイタリア系マフィア、バファリーノ一家とトラック運転手労働組合の委員長ジミー・ホッファの関係を描く。 ラッセル…

木村文乃のノイジーなギター- 『羊の木』

錦戸亮は町役場の公務員役が超ハマり役。というかああいうムダに(失礼)ルックスがよい勤め人いる。 木村文乃がノイジーなギターをかき鳴らす場面だけめちゃくちゃかっこよかった。 「のろろ様」のビジュアルはもっと禍々しい感じにしてもよかったのでは。 元…