森山未來の身体表現ーNHKドラマ『岸辺露伴は動かない』第二話「くしゃがら」感想

NHKドラマ『岸辺露伴は動かない』の第二話、「くしゃがら」を観ました。

行方不明となった担当編集者に渡された使用禁止用語リストに載っていた「くしゃがら」という言葉に取り憑かれた漫画家、志士十五を、森山未來が怪演していました。

IKEAのショッピングバッグみたいな大きい青いズタ袋を持ち、ホーボーのような風体の志士十五は、登場時点からかなりハイテンションかつ他人の話を聞かない、人を食った人間です。

それでも当初あった飄々とした軽快さは「くしゃがら」に取り憑かれてから消え去ります。
床を這いずり回り資料を舐めるように調べる姿は、問題となっている奇妙な単語の具現化のようでした。
特殊効果を使わないであれだけ「憑依された人間」感を表現できるのは、彼の並外れた身体の動きがあってこそのことでしょう。

一話目はスタンドそのものを見せなかったのですが、二話目は「くしゃがら」の恐ろしい姿を見せます。
その正体は「言葉」そのもので、関心を持った人間に伝染するという、Jホラー的な展開でした。

菊池成孔の不穏な弦楽も、恐怖を有機的に増幅させているようでよかったです。

それにしてもこのドラマ、衣装部がいい仕事しています。
荒木飛呂彦の原作はカラフルな色彩が特徴的ですが、このドラマ化での露伴はモノクロの衣装がベースになっているんですよね。主演の高橋一生のモード系が似合う体型にぴったりだと思いました。

あと、一度だけ挿話的に中村倫也が登場したときの画面の透明感が半端ないです。
記憶をなくした写真家、平井太郎役なのですが、彼の虚ろさがそれ以外のパートで展開するドロドロしたホラーの、一服の清涼剤のように機能していました。

当世一の役者陣を適材適所に配置しているドラマだなあ、と思いました。