映画『ナイル殺人事件』(1978年)感想
ジョン・ギラーミン監督作『ナイル殺人事件』(1978年)を観ました。
原作は、アガサ・クリスティの推理小説 “Death on the Nile”。
粗筋は以下の通り。
大金持ちの女相続人リネットは、親友ジャッキーに許婚として紹介されたサイモンと恋に落ち、略奪婚する。二人がエジプトへの新婚旅行に出かけると、行く先々に嫉妬に狂ったジャッキーが姿を現す。サイモンとリネットは彼女を出し抜いてナイル川下りの豪華客船の旅に出るが、その船にもまたジャッキーが乗り込んでいた。ある夜、自棄酒を飲んだジャッキーは、サイモンの膝を小型拳銃で撃ってしまう。翌朝、メイドのルイーズが、頭を打ち抜かれたリネットの死体を発見する。…
このリネット殺害の犯人探しが軸となっていきます。最も怪しいのは当然ジャッキーです。しかし彼女には、サイモンを撃って怪我を負わせた後、自殺しないように一晩中看護士がそばについていたというアリバイがあります。
そのほかにもリネット殺しの動機を持つ人々がありえないくらいの偶然で船に乗り合わせており、群像劇の様相を呈しています。この容疑者たちを、今だったらとても実現できないような豪華キャストが演じています。
リネットの財産管理権を狙う叔父はジョージ・ケネディ。
リネットの小間使いはジェーン・バーキン。
リネットの見事な真珠の首飾りを狙う金持ちの老婦人がベティ・デイヴィス。
その老婦人の世話係で、看護士の資格を持つ付添い人をマギー・スミス(30年前から老け役!)。
リネットとサイモンに付きまとうジャッキーをミア・ファロー。
扇情小説のモデルにリネットを使い、訴訟寸前になっている女性作家の娘をオリヴィエ・ハッセー。
探偵ポワロの友人で英国人弁護士をデイヴィッド・ニーヴン(初代007!)。
そして名探偵ポワロは、『オリエント急行殺人事件』でもお馴染み、ピーター・ユスティノフ。
とにかく出て来る女優さんたちが美し過ぎる!
リネット役のロイス・チャイルズはミラ・ジョヴォヴィッチとキャサリン・ゼタ・ジョーンズを足して二で割ったようなセクシーさ。色気と金と胸、三拍子揃ったこんな美人になびかない輩はいないよね!て感じです。
老いてなお扇情小説を書き続ける枯れない母親に振り回される娘を演ずるオリヴィエ・ハッセーのはかなさと陶器のようなつや肌!
ひっつめ髪とメイド服のジェーン・バーキン!
そして元許婚と元親友にストーカー行為を続けるメンヘル女を、可愛いままで演ずるミア・ファロー!この人の目力は凄くて、アップになると目が離せなくなります。青い血管が浮かび上がった、透き通るような肌といい、お人形さんのようです。
しかし一番目が離せなかった女優さんたちは、なんといっても有閑マダムのベティ・デイヴィスとその付添人マギー・スミスです。「貴族から落ちぶれて、私に仕えられるようになったんだから、よかったじゃない」「嫌な女、早く死ねばいいのに」と、主従の関係を超えてお互いを遠慮なくdisり合うこの二人のやり取りが、なんとも言えずおかしいです。
それから特筆すべきは、エジプトのピラミッドやスフィンクスが、魅力的に撮られています。ちゃんと人が小さく、それらの古代建造物が大きいことが分かるように画面構成されています。青空にそれらの古代建造物が映えるスケール感といったら、ちょっとほかには思い当たりません。実は子供の頃、お昼のテレビ放送でこの映画を観たことがありました。アブシンベル小神殿からミア・ファローが飛び出してくる場面と、カルナック神殿の柱の間を登場人物たちが歩き回る場面が記憶にあり、「なんの映画だったんだろう?」とぅずっと不思議に思っていました。それが今回判明して、非常に感慨深かったです。
正直、犯人は途中で予測できてしまい、犯行のトリック自体も結構無理があるのですが、名優たちの演技、エジプトの風景、ナイル川を下る船の美しさは、それを補ってあまりある魅力を持っています。見ていて飽きることはありません。最後に犯人の心情を想像してポワロがもらすモリエールの引用句まで、一気に魅せられます。
これを観て、束の間この暑い日本から飛び出し、遠いエジプトまで出かけた気分になってみるのも、一興ではないでしょうか。
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