2012年6月に観た映画・DVD

6月の鑑賞メーター
観たビデオの数:11本
観た鑑賞時間:793分

ダーク・シャドウ(ジョニー・デップ主演、ティム・バートン監督) [DVD]ダーク・シャドウ(ジョニー・デップ主演、ティム・バートン監督) [DVD]
アメリカ東部の漁村で貴族の男性が魔女に吸血鬼狩りされる話。マサチューセッツ州セイラムを舞台にした『緋文字』を思い出した。もっともこの映画で糾弾されるのは、不倫した女性ではなくメイドの愛を踏みにじった男性。厚化粧した登場人物の人工物っぽさは、結末における魔女の顔の状態で、伏線として見事に回収される。クロエ・モレッツの太ももがやたらフィーチャーされていたが、彼女のその部位もやはり最後にメタモルフォーゼを遂げる。ブルネットから金髪に変えた魔女、アンジェリークの純情が記憶に残る。デップの古風な言葉遣いがキュート。
鑑賞日:06月01日 監督:

Tinker Tailor Soldier Spy[UK-PAL][ImportTinker Tailor Soldier Spy[UK-PAL][Import
背広で武装し国家の防衛に関わる仕事をする男達の秘められた感情を描く。抑えた演技で老人の声音を出すオールドマンも凄いが、ジョン・ハートが美老人。バイセクシュアルの「裏切り者」が任務のために他人の妻を利用し、その伴侶に“It was nothing personal.”と言う場面がさりげなくむごい。彼が感情を通わす相手とパーティで見つめ合う場面、その二人の結末における涙の流し方が切ない。ベネディクト・カンバーバッチマーク・ストロングは、涙をこらえる姿が美しい。男だらけの映画なのに、色艶が半端ない不思議。
鑑賞日:06月03日 監督:

ジェーン・エアジェーン・エア
無一文の女家庭教師(governess)が貴族の男性と結婚するまでの話。庭園風景や,電気のない時代の夜の撮り方がキュート。牧師のコーリングではなくロチェスターコーリングに応えるジェーン。義務ではなく愛を選ぶ女性の姿が描かれている。少女時代を演じる子役の下膨れで赤い唇のふっくらした顔が、ミア・ワシコウスカのストイックな顔、目付きに成長するという劇中の変化は、寄宿学校の厳格な教育を表しているようでうまい。両想いになった直後、主役二人がお互いに触れる手つきは繊細さに溢れていて、確かにこれは恋愛映画だと思う。
鑑賞日:06月03日 監督:キャリー・ジョージ・フクナガ

エクソシスト ディレクターズカット版 [DVD]エクソシスト ディレクターズカット版 [DVD]
ダミアン・カラス神父の造型が重層的。俗世の精神科医(高収入)になる道を捨て神父になった、教会でのお勤めのために老齢の母親の世話ができず悩む、ボクサーであるなど、人生の様々な側面を見せてくれる。単純な聖職者像ではまったくない。神父と母親、リーガンと母親の関係など、改めて観ると気づくことが多い。精神科医とクリスの前に悪魔が出てくるシーン、クリスだけが咳き込むのはなぜか? 録音技師のスタジオのドアの上に、赤い大文字で“TASUKETE!”と書かれてあるのが不思議である。十字架で股を突くシーンは何度観ても衝撃的。
鑑賞日:06月08日 監督:ウィリアム・フリードキン

赤ずきん ブルーレイ&DVDセット [Blu-ray]赤ずきん ブルーレイ&DVDセット [Blu-ray]
童話の『赤ずきん』とは異なり、ヒロインはハイティーン。狼男の話ということで『トワイライト』の二番煎じかと思ったら、監督が同じだった。アマンダ・サイフリッドが扇情的な赤ずきんを演じる。通常の白ではなく赤いローブが彼女の花嫁衣装として用意されたことを考えると、花嫁の純潔ということはあまり問題になっていない世界観のようで、ヒロインは幼馴染のピーターを果敢に誘惑する。狼男の正体と動機には意外性があったが、人を殺す動機があまりに軽く、人外の者の苦悩を感じさせない。ゲイリー・オールドマンはこの映画にはもったいない。
鑑賞日:06月08日 監督:

シルビアのいる街で [DVD]シルビアのいる街で [DVD]
美青年の素描家が、古都ストラスブールで、6年前に会った女性シルビアを探す話。カフェで女の人たちをスケッチし、美人を街中追いかけ回す。不思議なことに、足音と雑踏の騒音だけは鮮明に聴こえ、それがだんだんとクセになる。風に吹かれてパタパタとノートがはためき、女性の長い髪が揺れる風景が、台詞もなく延々と映し出される。人待ち顔の女性達を見つめるカメラは自分にとってたったひとりの誰かを探す人、全ての視線でもあるのだろう。だが、「かつてない斬新な手法で撮られたまったく新しいタイプの恋愛映画」って惹句ほど斬新ではない。
鑑賞日:06月11日 監督:ホセ・ルイス・ゲリン

ミッドナイト・イン・パリ [DVD]ミッドナイト・イン・パリ [DVD]
小説家志望のアメリカ人が、婚前旅行でパリを訪問し、1920年代のパリにタイムスリップ。ロストジェネレーション作家やシュルレアリストと交流。主人公はハリウッド映画の脚本書きや脚本リライト業でそれなりの生計を立てているが、1920年代の「本物の芸術家」たちとの交流を通じ、単なる娯楽やインテリの虚飾ではない小説書きにのみりこんでいく。「観たらすぐ内容を忘れる」アメリカ映画への皮肉あり。名だたる芸術家たちのミューズであった女性に“naive and unassuming”という理由で主人公がモテるのが解せない。

鑑賞日:06月12日 監督:

Nijinsky [VHS] [Import]Nijinsky [VHS] [Import]
バレエ・リュスの興行主ディアギレフと妻のロモラ、どちらがニジンスキーをより愛していたのか、この映画は一つの解答を提示している。アラン・ベイツのディアギレフはそっくりだが、ジョルジュ・デ・ラ・ペーニャニジンスキーは美しすぎる気がした。ニジンスキーだと思わなければ、これ以上狂気と美貌のバレエ・ダンサーを巧みに表現している人はいない。ディアギレフの演出家としての力量が描かれているのがよかった。『牧神の午後』、『春の祭典』、『ペトルーシュカ』などの演目と、ニジンスキーの心情がリンクしているのが素晴らしい。
鑑賞日:06月12日 監督:Herbert Ross
Pirates of Silicon Valley [VHS] [Import]

Pirates of Silicon Valley [VHS] [Import]
シリコンバレーの海賊たち」という題名通り、この映画のジョブズビル・ゲイツは自分でオリジナルな物を「作る」のではなく、他人から「盗む」(金儲けのために活用する)。ジョブズはウォズニアックの才能を大いに搾取し、ジョブズゲイツゼロックスのエンジニアが開発したマウスを「盗む」。「打倒IBM」を目指し、『1984年』のビッグ・ブラザーを模した人物にハンマーを投げる女性のCMを撮らせたジョブズが、大きな画面から見下ろすビル・ゲイツと手を結ぶまでの皮肉な展開。iPod, iPhoneからの物語も見たくなった。
鑑賞日:06月15日 監督:Martyn Burke
ラブリーボーン [DVD]

ラブリーボーン [DVD]
14歳の少女が小児性愛者に殺されるが、死後も彼岸と此岸の中間に留まり、家族や犯人のそばに居続ける。彼女が経験するはずだったこと、彼女から奪われたものを見続けるのだが、「死んだ人間はもう何も経験できない」という先入観を破る終盤の展開が素晴らしい。ヒロインが身を置くシュルレアリスム的形象の世界、犯人が受ける思いもよらないような報い等々から、ファンタジー映画の印象。父親役のマーク・ウォールバーグの演技がよかった。殺人鬼から逃げ切れなかった姉を思ってか、妹がジョギングや腕立て伏せで体を鍛える場面にグッときた。
鑑賞日:06月18日 監督:ピーター・ジャクソン

HORRORS OF MALFORMED MEN : 江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間 [DVD]HORRORS OF MALFORMED MEN : 江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間 [DVD]
土方巽暗黒舞踏目当てで輸入版を購入。期待に違わぬ怪演ぶりに大満足。波しぶきをバックにクネクネと動き、ドレスの裾をつまんで海岸を全力疾走する彼の姿は強烈。ディストーションのかかった音楽も素敵。精神病院の監禁病棟から始まり、曲芸団、人間椅子、孤島のフリークスと、江戸川乱歩作品の要素を余すところなく映像化している。特典で塚本晋也監督、河崎実監督のインタビューがついていたので、非常に得した気分になる。結末には驚愕。あそこのシーンだけダダのコラージュ作品のようで、強烈なインパクト。石井輝男監督は偉大だと思った。
鑑賞日:06月25日 監督:石井輝男

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