2012年12月に観た映画・DVD

12月の鑑賞メーター
観たビデオの数:11本
観た鑑賞時間:784分

静かなる男 [DVD] FRT-190静かなる男 [DVD] FRT-190
1952年。原題"The Quiet Man"。「過去を忘れるために」故郷アイルランドに戻ってきた男ショーン。金を持っているらしい彼は、土地の慣習に反し、持参金なしで地元有力者の妹メアリー・ケイトを妻に迎えようとするが、さまざまな抵抗に遭う。「じゃじゃ馬慣らし」物語なのか、腕を引っ張って、ほとんど引きずるように妻を兄の下へ引っ張っていく場面がある。女性を尊重するアメリカ人男性が、土地の慣習に習い、力によって女を従わせるやり方を学ぶまでの物語にも見える。IRA党員が好意的に描かれているのが印象的。
鑑賞日:12月02日 監督:ジョン・フォード

ホネツギマン [DVD]ホネツギマン [DVD]
2004年米。原題"The Naked Man"。昼は整体師、夜は覆面レスラーとして働くエドワード。夢を実現しそうになった矢先に、ドラッグストアの全国展開を狙うスティクスに両親と妻を奪われ、正気を失い、「背骨の歪みが悪の根源」と、悪人たちの背骨を矯正してまわる。スティクスを演じるマイケル・ジェッターがエレガント。彼の部下のエルヴィス男を演じるのが『ファーゴ』でヒロインの夫を演じるジョン・キャロル・リンチなのだが、髪があるせいか、エンドロールを見るまで全然気づかなかった。最後にパンチの強いグロシーンあり。
鑑賞日:12月03日 監督:J.トッド・アンダーソン

ナイト・オブ・ザ・リビングデッド 最終版 [DVD]ナイト・オブ・ザ・リビングデッド 最終版 [DVD]
1968年米。手近にある物資の調達、TVを情報源とする事態の把握、ゾンビに侵入されないための建物の入り口の封鎖など、のちのゾンビ映画で見られるサバイバル術がすべて描かれている。「ショックのあまり放心状態となり、足手まといになる女性」もここで出てくる。ゾンビ歩きの演技プランが皆それぞれで観ていて楽しい。「原因不明の放射能レベルが増加し」たことがゾンビ出現の理由として挙げられているが、特にその伏線は回収も追究もされない。事態の発端となった凶悪犯と、最後まで戦った黒人が同じ墓穴に放り込まれるラストはゾッとする。
鑑賞日:12月03日 監督:ジョージ・A・ロメロ

人生の特等席(クリント・イーストウッド主演) [DVD]人生の特等席(クリント・イーストウッド主演) [DVD]
2011年の野球映画『マネーボール』と同じく野球の裏方にスポットを当てているが、データ野球、徹底した合理化、限られた人的資源の配置、裏方の苦悩に焦点を当てていた前者と比べ、この映画はベテランが長年の経験で得た感覚の重視、大物ルーキーによる一発逆転、ふんだんに用意された野球シーンなど、真逆をいく作劇。「娘は父を助けることにより」「移民は礼儀正しく白人に見出されるのを待つことにより」"善き"白人の父親の体現する価値観と既得権益を守りなさい、という主張が透けて見えるよう。私には毒々しい意図を隠した映画に見える。
鑑賞日:12月03日 監督:

ゾンビ 米国劇場公開版 GEORGE A ROMERO’S DAWN OF THE DEAD ZOMBIE [DVD]ゾンビ 米国劇場公開版 GEORGE A ROMERO’S DAWN OF THE DEAD ZOMBIE [DVD]
1978年伊米。スクリーンから観客に銃を向けるショットが多い。(ピーターがスティーヴンに"You never aim a gun at anyone, mister."と言うにもかかわらず、観客には向け続ける)。自分の持ち物に固執したロジャーやスティーヴンがゾンビになりかわってしまう点や、モール開店時の明るい曲で終わるラストは興味深い。ゾンビを食料の保存されている冷凍庫に放り込んだ理由は、何度観ても分からない。モールに集まるさまざまなファッションのゾンビに見られる、人種のるつぼとしてのアメリカ。
鑑賞日:12月04日 監督:ジョージ・A・ロメロ

ゾンビ ダリオ・アルジェント監修版 HDリマスター・バージョン [DVD]ゾンビ ダリオ・アルジェント監修版 HDリマスター・バージョン [DVD]
同作の脚本コンサルタントも務めたダリオ・アルジェント監修版。若いSWAT隊員自殺場面、修道女の袖がモールのガラス戸に引っかかる場面、ピーターがモールのゾンビを眺めながら"They're us, that's all. There is no more room in hell."と語る場面は、ロメロ版にはなかったと思う。全編を通じてゴブリンの音楽が使われており、アクション映画のような印象。ロメロ版にはあったピーターが生き残ることを決めるシーンにかかっていた威勢のいい音楽と、モール開店時の音楽がない。
鑑賞日:12月05日 監督:ジョージ・A・ロメロ

007 スカイフォール [Blu-ray]007 スカイフォール [Blu-ray]
ボンド映画50周年作品、シリーズ23作目、ダニエル・クレイグ007の3作目。トルコでテロ組織への潜入調査員のデータが入ったディスクが盗まれ、MI6とボンドが奪還に奔走するうち、犯人の標的がMだったことが明らかになる。モジリアーニが描く女のようなボンドガール、ターナーの絵のような軍艦島と船の描写、M=国母としてのエリザベス女王テニスンの詩からの引用、ボンドの故郷であるスコットランドでの最終決戦など、文化的政治的引喩と思われる箇所がいくつか。Qは若返り、「新しい敵は国家ではなく個人」という新しい設定に。
鑑賞日:12月09日 監督:

Woman in Black [Blu-ray]Woman in Black [Blu-ray]
2012年、ハマー・フィルム製作。原作はスーザン・ヒルの『黒衣の女』(1983)だが、妻が出産時に死亡していることや、Jホラーの『リング』風に「遺体の発見により霊を祓おうとする」など、映画ならではの設定変更も。冒頭に「コナン・ドイルも認めた霊界とのコンタクト」という新聞記事が出てきたが、あれは何かの伏線だったのだろうか。「開かずの間」、「不気味なピエロ人形」なども由緒正しいホラー映画といった趣。灯りが段々と消えていく演出は、スペインのホラー映画『ダークネス』を思い出した。観客が幽霊に「見られる」演出あり。
鑑賞日:12月10日 監督:James Watkins

Side By Side [Blu-ray] [Import]Side By Side [Blu-ray] [Import]
2012年米。フィルムからデジタルへの移行が映画に与えたインパクトを、映画監督、撮影監督、カメラ製造会社の技術者などに俳優キアヌ・リーヴスがインタビューするドキュメンタリー映画。"They are no longer dailies. They are immediatelies."("dailies"="rush"(下見・編集用プリント))という言葉が、デジタル時代の「速さ」を物語る。「デジタルなら"複製"ではない。まったく同じものができるから"クローン"」という、オリジナルと複製の関係の変化が面白い。
鑑賞日:12月16日 監督:

フランケンウィニー(ティム・バートン監督) [DVD]フランケンウィニー(ティム・バートン監督) [DVD]
2012年米。1984年のティム・バートン映画のセルフ・リメイク作品。天才科学少年ヴィクターは、飼い犬を不慮の事故で失うが、学校の科学の実験で習った技術を応用し蘇らせることに成功。ところが死んだペットを蘇生させることが流行し始め町はパニックに。せむしのエドガー、日本人少年トシアキなど、いい味のキャラクターがたくさんいるが、なんといっても白眉は隣の家のゴス娘を演じるウィノナ・ライダーである。日本の怪獣映画へのオマージュに溢れているのも素敵だ。「スパーキーの充電」シーンには携帯電話以降の時代性を感じた。
鑑賞日:12月19日 監督:

今日、恋をはじめます今日、恋をはじめます
2012年日本。原作は未読。前半は内気、地味で友人のいないメガネ女子を、成績優秀で眉目秀麗、Sっ気のあるモテモテ男子が「矯正」していく話。他人が話しかけやすいルックスに改造され、人と関わらざるを得ないスキルを身につける様は、一種のシンデレラ物語である。後半はヒロインが自分自身の夢を見出す物語であると同時に、彼氏が過去のトラウマを克服する過程を描く。「性欲と愛情は違う」など、男性主人公の内面的成長を描く様には、教養小説的側面もある。日記やデコ文字の導入は、少女漫画の文体を映画に融合させているようで面白い。
鑑賞日:12月20日 監督:古澤健

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