2011年4月に読んだ本


4月の読書メーター
読んだ本の数:9冊
読んだページ数:2967ページ

人生解毒波止場 (幻冬舎文庫)人生解毒波止場 (幻冬舎文庫)
表紙に"DA ANTIDOTE 2 DA SCUMMY LIFE"(「浮きかすだらけの人生への解毒剤」)と(なぜか黒人英語で)あるように、読み終わると不思議と清々しい気分になる。根本先生が紹介する「いい顔」のおやじたちは、チャーミングだが絶対に自分の人生では関わりたくないタイプの人々だ。安全圏に留まらずに敢えてそういう人々にコミットする根本先生は尊敬に値する。「(蛭子能収宇宙における)蛭子率という磁力」など、案外アインシュタイン相対性理論以降の宇宙観を意識していると思われる点にも教養の高さがうかがわれる。
読了日:04月22日 著者:根本 敬


スコット・ピルグリム&インフィニット・サッドネススコット・ピルグリム&インフィニット・サッドネス
スコット、リア充なのはもちろん、道行くギャルに「あの人イケてない?」と言われるくらいだからイケメン設定なのだろう。『らんま1/2』の主人公くらいの容姿レベルの男子の恋物語と想定して読んだ方がいい。「スコットしかいないの!」と盲目的なナイブス・チャウには若干イライラした。スコットはニートニートでも親に依存しているわけではなく、友人のカードを借りてデートする筋金入りのハイパー・ニート。ポケットを探ってもホコリやおもちゃくらいしか出てこない。と言っても出てくる人間皆バイト生活のような感じで自由を謳歌してる。
読了日:04月21日 著者:ブライアン・リー・オマリー


時計じかけのオレンジ 完全版 (ハヤカワepi文庫 ハ 1-1)時計じかけのオレンジ 完全版 (ハヤカワepi文庫 ハ 1-1)
選択の自由と教育についての物語。暴力的な選択しかできずに周囲に害を与えずにはいられない存在でも、選択の自由があった方がいいのか、それとも、暴力的に選択の自由を抑えつけても、周囲に害を与えない存在に矯正した方がいいのか。重要なのは、刑務所の中でさえ囚人が別の囚人に「教育」を施そうとしている点。「この男をなぐったことは誰も否定できないよね、この男に教育を施してやるってわけだったんだからね」(p.142)。主人公が「時計じかけのオレンジ」についてある考えに達する最終章、あった方がいいのか否かはよく分からない。
読了日:04月15日 著者:アントニイ・バージェス


死んでも何も残さない―中原昌也自伝死んでも何も残さない―中原昌也自伝
「書きたくて書いているんじゃないことしか書きたくない」「やるからには、人の認識を変えるようなことをやらなければならない」「みんな自分の趣味のひけらかしばかりやっていて、本当にうんざりする」など、名言連発。著者を嫉妬混じりに批判したために延々とこの自伝のなかで標的になった文芸評論家は誰だろう。自分探しと目玉の比喩を見て、「目玉」というのはあらゆる視覚的事象の取り込み口でありながら自分の目では見れない部分なので、氏の行なっていることは間違っても自分探しなどではないのだということは分かった。とても潔癖な印象。
読了日:04月12日 著者:中原 昌也


ニートピア2010ニートピア2010
「怪力の文芸編集者」、「放っておけば、やがて未来」という題名や、『引き籠もり悲喜こもごも』というフレーズなど、日本語の可能性を感じさせる。内容は暴力的で反復が多いのに、端整な文体なので読み疲れない。ところどころ作者が登場し、「金を稼ぐために原稿用紙のます目を埋めているだけ」と言うのだが、正直で倫理的な態度だと思った。二番目と最後の短編に出てくる怪力の文芸編集者安藤が印象に残った。「誰も映っていない」における、猫についてのちょっとイイ話が、グロテスクな奇譚に変化する様が素晴らしい。何度でも読みたい日本語。
読了日:04月07日 著者:中原 昌也


ワイルド7 4 コンクリート・ゲリラ編 (ぶんか社コミック文庫)ワイルド7 4 コンクリート・ゲリラ編 (ぶんか社コミック文庫)
ユキちゃんがエロかっこいい。コンクリート・ゲリラの拷問の仕方はほんとうにエグい。世界は真の漢。後半のミサイル争奪戦は頭脳戦とアクションの混ざり具合が絶妙。
読了日:04月07日 著者:望月 三起也


ワイルド7 1 野生の7人編 (ぶんか社コミック文庫)ワイルド7 1 野生の7人編 (ぶんか社コミック文庫)
手塚治虫と劇画の間くらいの絵柄で、躍動感がある。バイクと銃器のディティールが凄い。七人が一列になって「バウウウウウ」とバイクの唸りをあげるカットは最高に胸熱!暴力描写がハリウッド映画やヤクザ映画にも負けていないが、この迫力を今度の映画化でも出せるのだろうか。小奇麗にまとめられたのでは、ガッカリ感が半端ないだろう。
読了日:04月07日 著者:望月 三起也


まほろ駅前多田便利軒まほろ駅前多田便利軒
町田市をモデルとしたまほろ市で便利屋を営むバツイチの男性と、その便利屋に居候する友人(同じくバツイチ)の男性の話。シンプルな文体で読みやすかった。主人公多田が、小説という読者の興味の持続を旨とする虚構の主人公とは思えないほど繊細に他人を思いやるので、読者は彼らが出会う人々に実際にはなにが起こったのか推測するしかない。しかしその地方都市在住者らしい距離感に、リアリティを感じる。もう一人の主人公行天春彦の来歴は完全には明らかになっていないので、続編もあるのだろう。最近の小説では珍しいくらい煙草をプカプカ吸う。
読了日:04月06日 著者:三浦 しをん



共犯者 (新潮クライムファイル)共犯者 (新潮クライムファイル)
「共犯者」となった男性が、繰り返し「主犯にマインドコントロールされていた」と言っているのだが、スタンガンの下りを読むと、「共犯者」自身他人の痛みに極めて鈍感な人間に思える。もちろん恐怖の余り判断力が低下していたとも考えられるのだが…。終盤の検事への態度は、主犯の男性に何年もいいように操られていたことへの鬱憤を他人で晴らしていたように見えて不快だった。主犯を憎んでいるといいながら、物証がないため主犯の罪が証明されるのは自分の証言次第だと知るや、横暴な態度を取るのは解せない。担当刑事の最後の説教が救いだ。
読了日:04月04日 著者:山崎 永幸

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