2011年8月に読んだ本

8月の読書メーター
読んだ本の数:5冊
読んだページ数:545ページ
ナイス数:9ナイス

兄帰る (ビッグコミックススペシャル)兄帰る (ビッグコミックススペシャル)
結婚式の直前に突然姿を消した一人の男。三年後に交通事故に遭い、骨だけとなって帰ってくる。彼が失踪した動機は何だったのか。彼の許婚、妹、弟、母親が別々の視点から、失踪の真相に迫る。彼ら自身が過去の痛みに向き合い、過去を赦し、少しずつ前進する過程が描かれる。父親が蒸発したために大学を中退し、映画を撮る夢を諦めた男性が、「自分の人生は自己犠牲ではなかった」と確信するまでの物語でもある。心に迫ったのは、母親が蒸発した夫に再会し、「許さないけど、認める」と言うシーン。許容ではなく超克というトーンが通底する作品。
読了日:08月16日 著者:近藤 ようこ


消費社会の神話と構造 普及版消費社会の神話と構造 普及版
現代の消費社会を記号論で捉えた考察。「"生産"のセクターで十九世紀に起った生産力の合理化の過程が二〇世紀に入って"消費"のセクターでひとつの到達点に達する」(102)、「あなたをあなたの"選んだ"理想に近づけることによって、『本当のあなた自身』になることによって、あなたは集団の命令に最も忠実に従っていることになり、『押しつけられた』モデルに最も接近する」(123)、「消費のもっとも美しい対象−肉体」(186、章見出し)、「セックス交換基準」など、鋭い文章が並ぶ。きちんと理解はしていないので、要再読。
読了日:08月17日 著者:ジャン ボードリヤール


逆境ナイン 1 (少年キャプテンコミックススペシャル)逆境ナイン 1 (少年キャプテンコミックススペシャル)
「日の出商対クラスの暇な人」、「『それはそれ!!』『これはこれ!!』」等名言が並ぶ。キャプテンが校長との話で「風呂敷を広げる」ときにコマが風呂敷の形になる、強豪校が試合放棄しただけなのに死闘の末勝ったかのように喜ぶ等、野球スポ根漫画のパロディが並ぶ。冗談か本気か、紙一重のラインでやっている点に匠の技を感じる。マネージャーが得てきたライバル校のデータが役に立たず、結局は精神論、根性論で勝ってしまう。サカキバラゴウ先生が新屋敷に与えた「中間考査攻略法」は、実にためになる。
読了日:08月22日 著者:島本 和彦


逆境ナイン 2 (少年キャプテンコミックススペシャル)逆境ナイン 2 (少年キャプテンコミックススペシャル)
「ボールに歴史がないのなら投げるオレが七光りを与えるのみッ」など、気合とハッタリで難局を乗り切る野球漫画第2巻。勝負のあとの選手の雰囲気で周囲が勝ち負けを判断し、勝っていても敗北感を味わうなど、価値判断が「実力ではなくハッタリ」ベースなのが面白い。今回サカキバラ先生の「大きいコマを使って大声で言えば名言に聞こえる」シリーズは、「たたけばホコリはでる!」「背に腹はかえられん!」。不屈闘志の一目惚れの相手桑原真美子は、酒井法子がモデル。野球と女の子の二者択一で死ぬほど深刻に悩む展開が熱い。
読了日:08月27日 著者:島本 和彦


シミュラークルとシミュレーション (叢書・ウニベルシタス)シミュラークルとシミュレーション (叢書・ウニベルシタス)
「シミュレーションとは起源も現実性もない実在のモデルで形作られたもの、つまりハイパーリアルだ」(1-2)。現代は、オリジナルなきコピー、誕生した瞬間からコピーであるモノ、つまりシミュラークルの時代である。「ベンヤミンが映画、写真、現代のマスメディアについて描いているが、こんな展開をみせる最も先端的で近代的な形態とは、そこにオリジナルがもはやなく、決して存在さえしなかったということだ」(「クローン物語」130)。『チャイナ・シンドローム』、『クラッシュ』、『地獄の黙示録』等の映画も扱う。マクルーハン頻出。
読了日:08月30日 著者:ジャン ボードリヤール

読書メーター