2011年11月に読んだ本

11月の読書メーター
読んだ本の数:5冊
読んだページ数:1236ページ
ナイス数:2ナイス

ライ麦畑でつかまえて―The catcher in the rye  (講談社英語文庫) (Kodansha English library)ライ麦畑でつかまえて―The catcher in the rye (講談社英語文庫) (Kodansha English library)
ニューヨークのアッパーミドルクラス男子が、何度目かの放校処分に遭い、ガールフレンドや友人、娼婦と交流しながら町を彷徨う話。体育会系と文化系の対立、弟アリーの死というトラウマ、ホモフォビア、女性蔑視、映画への嫌悪といった、様々な問題をはらんでいる。ホールデンが大声を出しながら自分では気づかないのはなぜか。公園で幼児にココアを飲まないかと誘い断られる彼と、彼にゲイの嫌疑をかけられるアントリーニ先生はオーバーラップする。"Phony", "lousy", "it killed me"等、語彙が貧しいのも特徴的。
読了日:11月09日 著者:J.D.サリンジャー,J.D. Salinger

新しい世界の文学〈第20〉ライ麦畑でつかまえて (1964年)新しい世界の文学〈第20〉ライ麦畑でつかまえて (1964年)
"It killed me"を自分ではどう訳すかと考えていたが、この翻訳の「これには参ったね」には納得がいった。「〜じゃねえよ」等、同世代同士で話すときの十代後半の乱暴な言葉づかいや粗暴さは、原文からよく訳出されていると思う。久しぶりに読み返して、主人公ホールデンの無意識の女性蔑視など、目につく点がいくつか。大人になってから読むと、主人公の若者特有の身勝手さよりも、周囲の大人たちが彼に振り回されている様のほうがよく分かる。アクリーとホールデンホールデンとストラドレーターの関係性の重複が気になった。
読了日:11月09日 著者:J.D.サリンジャー

Salinger's The Catcher in the Rye (Reader's Guides)Salinger's The Catcher in the Rye (Reader's Guides)
"Catcher in the Rye"の入門書的内容。1. "Context"(時代・文化的背景), 2. "Language, Style and Form"(言葉遣いと文体)3. 各章の要約と著者の解釈、4. 批評的受容史と出版史、5. 翻案、解釈、影響関係の5部から成る。平易で分かりやすく、誠実な解釈だが、ホールデン女性嫌悪ホモフォビアなど、もう少し掘り下げてほしかった気もする。2007年の出版なので、"Catcher~"をモチーフにした比較的新しい映画(『陰謀のセオリー』)も取り上げている。
読了日:11月12日 著者:Sarah Graham

フレンチ油田を掘りあてる (1960年) (創元推理文庫)フレンチ油田を掘りあてる (1960年) (創元推理文庫)
ブリストルの地方大地主一家の三男が、領地内に油田があることに気付く。誰かほかの人間に気付かれないうちに油田開発を進めるため、家族会議を開くが、長男の素人画家モーリスだけが田園風景保護の観点から反対する。数日後、モーリスの轢死体が鉄道踏切で発見される・・・。主に領主の甥の妻ポーリンと、ロンドン警視庁警視ジョゼフ・フレンチの視点から語られる。怪しいと思った出来事や人物同士の点と線が繋がっていく後半は楽しいが、それまでがやや長すぎるように思われた。動機も凡庸。フレンチはキチガイっぽい探偵ではなく、上品で常識家。
読了日:11月22日 著者:F.W.クロフツ

J.D. Salinger's The Catcher in the Rye: A Routledge Study Guide (Routledge Guides to Literature)J.D. Salinger's The Catcher in the Rye: A Routledge Study Guide (Routledge Guides to Literature)
"The Catcher"、およびサリンジャーの入門書。サリンジャーの生涯と作品、第二次世界大戦後のアメリカ社会と文化の文脈説明、Cactherと検閲、作品を四部構成に分けての解説、1950年代から10年ごとの批評史、2007年当時最新の批評論文5本。マルクス主義精神分析理論、フェミニスト的読解、クィアスタディーズなど、初学者向けに一から分かりやすく説明しており親切。ホールデンの嘆きを、女性化した市場への男性的英雄の反発という大きな流れの中で捉えたSally Robinsonの論文が特に面白かった。
読了日:11月23日 著者:Sarah Graham

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