"I got a hunch."-『ミッション: インポッシブル ゴースト・プロトコル』感想
年末に、立川シネマ・ツーで、『ミッション: インポッシブル ゴースト・プロトコル』を観てきました。(Dir. Brad Bird, Mission :Impossible Ghost Protocol. 2011. United States.)
ダイナミックな大活劇で、とても面白かったです。以下、特に印象に残った点を箇条書きで。
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I got a hunch:
これを観ると、「なぜ数多いるスーパースパイたちのなかで、イーサン・ハント(=トムクル)が一頭抜きんでているのか」が分かります。
トレヴァー・ハナウェイというスパイが冒頭で登場します。彼は「ビルから落下しながら振り向きざまに敵二名を撃ちつつ予め地面に広げておいた緩衝材の上に着地する」ことができるくらい有能なスパイ(プラス渋みのあるイケメン)です。
にもかかわらず、彼は殺し屋に暗殺されてしまいます。なぜこんな超絶技能を持つ有能なスパイが命を落とすのに、イーサンは助かるのか、それは彼の勘が並はずれていいからです。
劇中何度もイーサンは"I got a hunch"(hunch=直感、勘)と言い、即興で自分や仲間の命を救い、作戦を微妙に変えてなんとかうまくいくほうに導きます。生きるか死ぬかの瀬戸際で必要な勘。こればかりはいくら訓練でもどうにもならないものであり、それがあるイーサンは間一髪の場面で生き残れた、ということが描かれていて、面白かったです。
やるときゃやるよ、女スパイ:
前述のトレヴァー・ハナウェイですが、彼が従事していた作戦でチーム・リーダーであり、ハナウェイの恋人たったのがジェーン・カーターという女性エージェント(ポーラ・パットン)、そして彼を暗殺したのは「宝石のために働く」女殺し屋サビーヌ・モロー(レア・セイドゥ)です。ここから女同士の戦いが始まるのですが、ポーラ・パットンとレア・セイドゥの立ち回りは、これだけで一本の映画ができるんじゃないか、というくらいかっこいよかったです。自分が指揮を執ったミッションで恋人を亡くしたジェーンの感情が、映画のプロットを推進させる複線として機能しており、非常にうまいと思いました。
謎の男ウィリアム・ブラント:
イーサンの所属するCIAの特殊組織IMF(Impossible Mission Force)から、分析官のウィリアム・ブラントが新たにチームに加わります。分析官のはずなのに、やたら筋骨隆々で、どう見てもただの分析官ではありません。映画シリーズ一作目から裏切りに満ち溢れていたこのシリーズ、「ブラントもどーせ金目当ての裏切り者だろー」と思って眺めていたら、実は前作から今作までのあいだにイーサンの身に起こった出来事に深く関わっていた人物であるとこが明らかになり…。とまあこんな具合に、ブラントのアイデンティティがこの映画の最大のフックであることは間違いありません。
チーム=機能させるもの:
微妙なネタバレになってしまいますが、びっくりしたことに、今回最終的に危機を止めるのはイーサンではありません。詳しくは書きませんが、今回のミッションが成功するのは、チームでがんばったからです。それを象徴するのが終盤のサイモン・ペッグ演じるテクニシャン上がりのエージェント、ベンジー・ダンの血まみれの指。それまでテクニシャンでありフィールドに出て実地行動を行うエージェントをヒーローとしてメタ的に(つまりは他人事として)とらえていた彼が、本物のエージェントになれた瞬間が描かれています。*1
タイトルの意味:
今回クレムリンの爆破に関わっているという疑いがかけられ、アメリカ合衆国大統領はIMFとの関係を否認する"Ghost Protocol"を発動し、イーサンの所属するIMFは閉鎖されてしまいます。イーサンと残されたチームのミッションは、残った最小限の資金、設備でIMFの汚名を雪ぐことです。"Ghost"とは、「幽霊」とか「実態のないもの」という意味ですが、映画終盤で、イーサンの私人としての人生自体がゴーストのようなものであることが明らかになる場面があり、非常に切なくなりました。
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以上個人的に気に入った箇所の羅列でしたが、たぶんDVDで見直したらそれどころではないディティールが詰め込まれている作品だと思います。ただそれに淫しないスケール感のある、楽しい娯楽大作でした。特に、移動の可能性がある電車車両を待ち合わせ場所に設定して、走りながら網膜でアイデンティティ確認の場面には、これまでの3作品にはない底抜け感を感じました。
*1:FBIにおけるエージェントとテクニシャンの関係がうまく描かれているのが、『ゲット・スマート』。訂正:舞台はFBIだと思い込んでたんだけど、スマートが所属するのはCONTROLという秘密諜報機関でした。参照→Get Smart (film) http://en.wikipedia.org/wiki/get_smart_(film)