2012年9月に読んだ本

2012年9月の読書メーター
読んだ本の数:17冊
読んだページ数:2804ページ
ナイス数:5ナイス

ワイルド7 12 [地獄の神話] 前編 (12) (ぶんか社コミック文庫)ワイルド7 12 [地獄の神話] 前編 (12) (ぶんか社コミック文庫)感想
航空会社「神話航空」経営の裏で、ジェット機を使った密輸ビジネスで荒稼ぎする神話太郎、元次郎、元明の三兄弟。一族の壊滅を命じられたワイルド7は、まず最初に刑務所に収監されている末弟、元明の処刑に取りかかる(粗筋参照)。「抜けないようにできている」はずの銛を引き抜く場面、殺人トレイラー、側面にも車輪のついた変わりバイク、有刺鉄線を巻き付けたバイクでのチェイスシーンなど、見所満載。ワイルド7の一人 オヤブンが「元予科練」という点に時代を感じた(「戦後30年」の物語らしい)。「攻撃は死角をつくを正道とする!!」。
読了日:9月4日 著者:望月 三起也

Central BristolCentral Bristol感想
1997年出版。写真ポストカードから、20世紀初頭のブリストル街の様子を振り返るシリーズの14冊目。港、湾岸倉庫、公園、大学前広場など、セントラル・ブリストルの主要部をカバー。裏表紙から、"Bristol"という名前が"Brigstow"(橋の上への定住)から来ていると知った。1914年にはまだ走っていた路面電車がいまではもうなくなっていること以外、そんなに建物や街の様子は変わっていないのではないか。撮影された年代が書かれていないポストカードがいくつかあるが、建造物の建築年や来歴はきちんと説明されている。
読了日:9月6日 著者:Janet Fisher

ワイルド7 13 [地獄の神話] 後編 (13) (ぶんか社コミック文庫)ワイルド7 13 [地獄の神話] 後編 (13) (ぶんか社コミック文庫)感想
激戦後入院した飛葉を、シカゴからの刺客5本指(登場時は4人)が狙う。饒舌な放火犯、夜警のおじいさん、通りすがりのヤクザなど、善意の他者が飛葉のためにどんどん倒れて行く。死んでもおかしくないほど満身創痍の飛葉が、痛みに涙を流しながら戦っている様子がリアル。最後に対決する5本指の生き残りとヘボピーが、人種が違うこと以外そっくり(巨体、グラサン)。二人の特撮スタジオでのミニチュア家屋をバックにした戦いは、怪獣同士のよう。悪役については、三男には優しい長男の太郎が、次男の元次郎にはやたらと冷たいのが気になった。
読了日:9月6日 著者:望月 三起也

The Woman in Black: Movie Tie-inThe Woman in Black: Movie Tie-in感想
ロンドンに住む事務弁護士が、亡くなったクライアントの遺した書類整理に赴いた土地で遭遇する恐怖体験。目が空洞となった黒衣の女、葬儀を見守る子供達、沼地から聞こえる子供の悲鳴…。沼地やその真ん中に建つ屋敷の描写など、ゴシックホラー風味。息苦しくなるのは'"the chain"(194) of curse'[呪いの連鎖]が途切れたかそうでないか判明しない点である。主人公は普通のオカルト物語とは異なり、超常現象を止めるための禊を特に行わないので、ヤマがないようにも思える(5日間熱にうなされる描写はあるが)。
読了日:9月17日 著者:Susan Hill

Bristol: New PerspectivesBristol: New Perspectives感想
2008年初版。ブリストルの様々な建物や風景を、外国風に撮影した写真集。エリザベス朝の人々の言葉で言うと、"conceit"(「奇想、奇抜な比喩」、序詞より)。「見慣れた風景を異国風に撮り、いままで見えなかった姿を提示してみせる」という方法は面白いと思うが、典型的な異国観に頼り過ぎているようにも思える。鉄条網の奥に爆撃された跡のような建物に「アフガニスタン」、建物が半分になって鉄骨とコンクリートの断面が晒された建物に「イラク」のキャプションを付けるのは、少し乱暴で紋切り型なレッテル貼りのように見えた。
読了日:9月17日 著者:Jamie Koster

Bristol RiotsBristol Riots感想
2011年春、ブリストルのストークス・クロフトに進出してきたスーパーマーケット、TESCOに対する住民の暴動を記録した写真集。居合わせた人が撮影した写真と、暴動に関心を持っていた人々が発した2011年4月22日のツイートから成る。バンクシーTESCO火炎瓶ポスター、"Flower Chuckler", "Mild Mild West"が引用されている。巻末の「暴動学」では、散逸する主張者達の存在が大きな物語全体主義を否定していることや、CCTVの映像が個人を抽象にしてしまうことなどを語っていて面白い。
読了日:9月17日 著者:Louis Rice,Jason Davies,Mark Cains

Don Pedro Presents - Politics & Protest: A Decade of Bristol Subvertising, Graffiti, Stickers and PostersDon Pedro Presents - Politics & Protest: A Decade of Bristol Subvertising, Graffiti, Stickers and Posters感想
第2版。著者が過去10年間に自転車もしくは徒歩でブリストルを移動し、写真におさめたsubvertisement(不買広告)やgrafitti,ステッカーやポスターの数々。「subvertisingというのは、現存する広告に文字や絵を加えてその意味を変えること。もしくは何かありふれたイメージを使って、なにか予想外のことを言うこと」(序詞より)。対象は政府、人権、資本主義、環境、貧富の差、消費など。買い物を勧める看板に、「働け、買え、消費しろ、死ね」など、映画"They Live"の影響を思わせるものも。
読了日:9月18日 著者:Pete Maginnis

Bristol Then and Now: Vol 2Bristol Then and Now: Vol 2感想
19世紀後半から20世紀前半のブリストルを、ポストカードと写真でふりかえるシリーズの18冊目。土地ごとの白黒写真とキャプションが、1ページに2枚載っている構成。過去の写真を上部に掲載し、同じ角度から同じ建物を新たに撮影した写真が下に配置されるパタンが多い(だから題名が"Then and Now"なのだが)。注文すれば1枚7ポンドで複製してくれるらしく、商品カタログの意味もあるのだろう。20世紀初頭の写真に写っていた路面電車とその線路がなくなったからか、なぜか現代の写真の方からは田舎っぽい印象を受けた。
読了日:9月18日 著者:Janet Fisher,Derek Fisher

The Banksy QThe Banksy Q感想
バンクシーが2009年夏に開催した展覧会"BANKSY VS. BRISTOL MUSEUM"の訪問者は30万人にのぼる。地元団体のPeople's Republic of Stokes Croftが、待っているあいだ何か描くよう行列に並んだ人々に頼み、3,500人がそれに応じた。この本は集まったイラストや文章の中から選んだものを載せている。行列に並んだ人々に個別性を与える行為としては面白いと思う。それにしても、行列から一冊の本が派生するほどに、インパクトが大きかったということか。展示品の写真も多数。
読了日:9月19日 著者:Katy Bauer

Slave Trade Trail Around Central BristolSlave Trade Trail Around Central Bristol感想
Bristol City Museumで購入。ブリストルにおける奴隷貿易の歴史と、関連する人物、史跡をたどったパンフレット。42の建物を、奴隷貿易との関連で紹介している。17世紀後半、奴隷貿易と奴隷が生産する商品によって富を得たブリストル。ロンドンに次ぐ奴隷貿易港として、1730年代に栄えたが、リヴァプールに追い越される。奴隷貿易は1807年に廃止されたが、英国植民地におけるすべての奴隷が解放されるまでは1838年までかかったらしい。ブリストルの発展や政治に、奴隷貿易が密接に関わっていたことが分かる。
読了日:9月20日 著者:Madge Dresser,etc.

See No EvilSee No Evil感想
「2日間で通り全体をペイントする」。2011年にブリストルのネルソン・ストリートで市の許可の下開催されたストリート・アートのイベント"See No Evil"の記録。70人ほどのアーティストが参加し、何千人もの人が訪れたらしい。市議会のマイク・ベネット氏の発言を引用すると、「(ストリート・アートはブリストルにおいて)単なる芸術家気取りの遊びではなく、明白な経済推進力であり、創造的かつ非因習的なライフスタイルは、私達のユニークなセールス・ポイントだ」。この街はストリート・アートを観光資源として活用している。
読了日:9月20日 著者:Stephen Morris

Banksy: You Are an Acceptable Level of Threat and if You Were Not You Would Know About ItBanksy: You Are an Acceptable Level of Threat and if You Were Not You Would Know About It感想
バンクシーがいかにラディカルか説明する本。最終的には、「所有物への損害がなければ、ストリート・アートではない」「所有の概念を攻撃するからこそバンクシーは過激なのだ」という結論に。「嘆きの壁にグラフィティ」というスタントをイスラエルパレスチナの関係から解説した箇所もあり、初学者にも親切な内容。Occupy Londonの際にモノポリーを置くパフォーマンスがあったが、「モノポリーはもともと資本主義がクソだと教えるために発明された」という解説があって目から鱗。「批判する前に自分で壁を塗れ」と読者を挑発。
読了日:9月22日 著者:Gary Shove,Patrick Potter

The Naked Guide to Bristol: Not All Guide Books are the Same (Naked Guides)The Naked Guide to Bristol: Not All Guide Books are the Same (Naked Guides)感想
三部構成となっており、第一部はブリストルの主要エリア紹介、第二部は土地の来歴、過激な政治傾向と暴動の歴史、ご当地出身の有名人、音楽、ランドマーク的な建物、子供向けの観光地、第三部はパブやレストラン、文化を味わえる場所、メディア、夜の遊び場、ゲイ・シーンなどをそれぞれ紹介している。中盤に設けられたカラーページ「ストリート・アート」には、1980年代3Dが描いた二人の警官の絵(「ブリテン島で最初のグラフィティ?」と説明がある)から、最新のタグやステンシルを掲載。反消費、反企業文化的傾向の記述が随所に見られる。
読了日:9月26日 著者:Gil Gillespie

Bristol and Transatlantic SlaveryBristol and Transatlantic Slavery感想
1999年第二版。Bristol Museums and Art Galleryにて60ペンスで購入。イングランド南西部の一港町が、いつ、どのように、なぜ奴隷貿易に巻き込まれていったか、誰が利益を得たのか、ブリストルに多くの奴隷はいたか、奴隷貿易は終息した理由、奴隷貿易があんなにも長い間継続した時代背景、著名な奴隷廃止論者は誰だったのかを、平易な英語で説明。福音主義教会の宗教家が奴隷貿易に反対したのは、それが「背徳、残虐性、無宗教を促進するからで、人種の平等を信じていたからではない」という記述あり。
読了日:9月29日 著者:Madge Dresser

Popaganda: The Art And Subversion Of Ron EnglishPopaganda: The Art And Subversion Of Ron English感想
アメリカのビルボード改変者にしてポップ・アーティストのロン・イングリッシュの作品集。アップルの広告文 "Think Different"の横にチャールズ・マンソンの写真を載せた改変広告が強烈。シナトラの顔に恐竜、モンローの顔に鮫など、多重イメージを用いた作品や、モナリザや子供の顔にキッスのメイクを施す、ゲルニカをディズニーキャラに置き換えるなど、転置効果を狙った作品が多い。後半になると自分をキリストに見立てた作品が頻出するのだが、冗談か本気か分からない。タバコ会社のキャメルやマックを標的にしている。
読了日:9月29日 著者:Ron English

芸術実行犯 (ideaink 〈アイデアインク〉)芸術実行犯 (ideaink 〈アイデアインク〉)感想
すごく読みやすい。福島第一原発の20km圏内に行き旗を立てるパフォーマンス「REAL TIMES」(2011.4.11)についての記述は迫力がある。しかし自分はやはり、こういったパフォーマンスやコンセプト主体のアートではなく、アーティストのスキルを感じさせる作品の方が好きだ(例:『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』でバンクシーが一気呵成にステンシルを作り上げる際の勢い)。「志」という言葉には抽象的で胡散臭いものを感じる。ゼウスの「スペクタクルの独創的な転用・逆用」(83)についての説明は面白かった。
読了日:9月30日 著者:Chim↑Pom(チン↑ポム)

Evening Post, Banksy souvenir supplement (Wednesday, September 2, 2009)Evening Post, Banksy souvenir supplement (Wednesday, September 2, 2009)感想
Bristol Reference Libraryにてコピー。2009年に行われた展覧会 "Banksy versus Bristol Museum"についての特別号。極秘で準備された数週間、美術館の関係者数名とバンクシー側のスタッフ数名しか展覧会については知らされておらず、美術館側も誰がバンクシーか分からなかったらしい。展示品の写真、6時間並ぶ必要がありながら、ほとんどの人が文句も言わなかった行列、12冊の観覧者ノート、地元に与えた経済効果、選りすぐり12作品の人気投票、後片付けの様子などが載っている。
読了日:9月30日 著者:

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