燃えるような画面の黙示録的作品-『マンディ 地獄のロード・ウォーリアー』6

VHSのパッケージが似合いそうな作品。色調も画質も、そして字幕まで80年代に寄せてきている。


1983年、カリフォルニア州東部にあるモハーヴェ砂漠のシャドウ・マウンテンが舞台。


エピグラフは、2005年に刑が執行されたテキサス州死刑囚の最期の言葉。

 

「黒Tシャツに書かれてそうな言葉だな」と思ったら、ネットで実際に黒字にピンク字で上記の言葉が書かれた黒Tシャツが山ほど販売されていた。アンドレア・ライズボロー演じるマンディも、黒Tシャツを着て登場する。左目の下にひびのような傷を持ち、黒髪のライズボローのルックがいい。

 

冒頭からキング・クリムゾンの曲が流れ、サイケ感満点。


マンディはベッドの上で、実在しない作家レノラ・トールの『ヘビの瞳を探し求めて』というペーパーバックを読んでいる。


犬笛で呼び出される謎のバイカー集団。


カルトのリーダー、ジェレマイアがカーペンターズの名前を口にすることが、このグループのダークな面を思い起こさせる。


ジェレマイアの「与えられるべきものを全て奪われてきた」というのは、成功しなかったミュージシャンからカルトのリーダーになった者ならではのセリフ。


目の前で妻を焼かれて奮起するレッド(ニコケイ)。復讐が武器を手作りするところから始まるのが凄い。


ジェレマイアの"I suck your fuckin' dick.  Is that what you want?"が「ぶっ殺してやる、それが望みだろ?」と訳されていた。あの形勢でこのセリフは変な誤訳。


画面がよく明滅する。全体的に画面が赤い。まるで絵画のようで、グラフィックノベルを読んでいるような気分になる。鋳型から武器を作ったり、ボウガンを預けていた友人から受け取ったりと、説明はなくとも過去に人を殺すような仕事をしていたのではないかと思わせる主人公、レッド。ブラック・スカルズの造形といいこのマジカルニグロっぽい友人といい、ストックキャラクターぽくて、ニコラス・ケイジ主演のアメコミ映画を撮ったらこういう感じかな、と思わせた(すでに『ゴーストライダー』という前例があるけれども)。


カルト集団をレッドは"Jesus freaks"と呼んでいたが、キリストの教えを自分に都合よく解釈しただけの狂信者たちで、これまたストックキャラクターっぽい。


「これは類型だから説明不要でしょ」とばかりに、ほとんど台詞もなく、強烈なイメージを断片的に繋げてお話が進んでいく映画だった。リアリティのない物語展開を、アンドレア・ライズボローとニコラス・ケイジの演技力だけで支えている("They set her on fire"と泣き崩れるときの感情の爆発よ)。

 

木星土星が重要なモチーフとして序盤と最後に登場する。


圧の強い不穏な音楽は、2018年に死去したヨハン・ヨハンソンが担当。