曖昧な存在に形を与えるものとしての愛-『本気のしるし』感想

『本気のしるし』をFilmarksのオンライン試写会で観ました。曖昧ですが最後の展開までネタバレしてます。未見の方はご注意。

 

愛することのないまま二人の女と関係を続けている優しいけれども残酷な男が、ひょんなことからある女を助け、そのままゴロゴロと坂道から転が落ちるかのように女の抱える「地獄」に巻き込まれます。

 

2人の関係が進展するにつれ、これまでのだらしなさ、曖昧さのつけを払わされるかのような金銭トラブル、人間関係の地獄絵図が展開します。

 

いつも楽そうなワンピースを着た切り下げ髪の女は、「すみません…」「ごめんなさい…」が口癖で、その見た目も行動もちょっとだらしない感じです。

 

男の方は口調も仕事の仕方もクリアカットで、硬質の印象を与えるのですが、その実、来る者は拒まずな感じで社内の先輩、後輩と付き合っています。

 

そんなだらしなくて曖昧な存在様式の男女が出会い、女の方はある出来事をきっかけにはっきりした存在の輪郭のようなものを獲得し、逆に男は硬質、明晰な立居振る舞いから「死んでるも同然」の薄汚れた生活様式に自らを落とし込みます。

 

その2人が「本気のしるし」を試すイニシエーションを経て、自らの意志で再び生きることを選ぶまでの地獄巡りのような物語だと思いました。