2012年2月に読んだ本

2月の読書メーター
読んだ本の数:9冊
読んだページ数:3479ページ
ナイス数:7ナイス

ときめきのガールズ・ムーヴィ 女子映画スタイルときめきのガールズ・ムーヴィ 女子映画スタイル
「女子映画」の定義から始まる。英語の"Chick Flick"や"Chick Lit."の紹介から、「女子映画独自の目線と評価基準」(2)をつまびらかにしていく。女子が一度はプレイボーイと付き合うべき理由(『アルフィー』評)や、シルヴィア・プラステッド・ヒューズとの関係で狂っていった理由(『シルヴィア』評)、『フライトプラン』で最も怖いのはジョディ・フォスター等、目から鱗の解釈が多い。「どうせ闘っていかなければいけない世の中ならば、綺麗に闘うこと」という教訓を与えてくれるという『理想の女』は観たい。
読了日:02月07日 著者:山崎 まどか

イノセント・ガールズ 20人の最低で最高の人生イノセント・ガールズ 20人の最低で最高の人生
日本ではあまり名前が知られていない20世紀半ばに活躍したアメリカ人女性たちの伝記の抄録。一般的な意味での成功者よりも、自分の夢を追求した独特な女性たちについて。その多くは夢破れて孤独に死んでいった女性だが、後世に大きな影響を残している。どんなに傷つこうとも妥協せずに独特のヴィジョンを追求した彼女たちの姿を見て、なぜ『イノセント・ガールズ』という題名なのか分かった気がした。巻末に主要参考文献の洋書が記載されているので、時間があったら読みたい。独立独歩の女性監督ドリス・ウィッシュマンの映画に興味を引かれる。
読了日:02月07日 著者:山崎 まどか

Banksy Myths and Legends: A Collection of the Unbelievable and the IncredibleBanksy Myths and Legends: A Collection of the Unbelievable and the Incredible
バンクシーについての面白事実を、彼のグラフィティ・アートの写真とともに並べた本。2010年のブリストル美術館におけるエキシビジョン、バンクシーの正体についての噂、すでに消された作品についてなど。『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』の成立過程が「彼の正体を暴こうとした映画であることをラッシュを観て知るまでバンクシーは映画を作るつもりはなかった。彼のアイデンティティを再び隠蔽するために編集して再撮影するという合意のもと、全ての素材をグエッタから買い取った(額は未公開)」とあるが、本当だろうか。
読了日:02月07日 著者:Marc Leverton

ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 (上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 (上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)
左翼系の月刊誌『ミレニアム』の発行責任者兼記者ミカエルと、警備会社ミルトン・セキュリティの調査員リスベットの物語が交互に語られる。両者ともにiBookを使っているが、あまりにも頻出するため、これらは二人の武器、あるいは身体の一部のように思えてくる。リスベットが後見人の弁護士のもとへ金を調達しにいくのは、発売されたばかりのPowerBookG4を買うためだったいうのは象徴的だ。そんなデジタル・ネイティブのリスベットだが、起こったことを忘れないための方法が、刺青で自分の身体に刻印することだというのが興味深い。
読了日:02月15日 著者:スティーグ・ラーソン

ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 (下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 (下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)
フェミニスト・ミステリのシリーズ一作目下巻。ミカエルとリスベットが40年前の行方不明事件を追ううちに、被害者であるハリエット自身が連続婦女暴行殺人事件を調べていたことが明らかとなる入れ子構造。人付き合いが苦手な女たちが次々とミカエルに落ちるのは、彼が女性を人間扱いし、ありのままの姿でいさせてくれるからか。それにしても、決定的な証拠を掴むまで彼が真犯人を一度も疑わないのは不自然ではないだろうか。また、フィンチャー版の映画では決定的場面でのリスベットの台詞が「殺してもいい?」と許可を求めるものになっていたが、この文庫版では「あいつはまかせて」(278)。リスベットのキャラクター造形を考える上で、この違いは大きい。
読了日:02月16日 著者:スティーグ・ラーソン

ミレニアム2 火と戯れる女 (上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)ミレニアム2 火と戯れる女 (上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)
売春組織について調べていた学者とジャーナリストのカップルが殺され、ミカエルは再び事件に巻き込まれていく。そこにはリスベットの過去も深く関わっていた。社会学を学ぶ女性がリスベットを「社会のエントロピーを増大させるカオス要因」(196)と評しているのが面白い。パルムグレンが生きていたことを知らなかったことで、自分をエゴイストと責めるリスベット(228)の姿には、人間的成長が感じられる。「頭がおかしい」(399)、「すぐ暴力に走る」等、「資料に書いてある」ことを根拠に女性の社会的人格が規定される様が描かれる。
読了日:02月18日 著者:スティーグ・ラーソン

ミレニアム2 火と戯れる女(下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)ミレニアム2 火と戯れる女(下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)
警察に追われるリスベット。彼女について十代の頃取られた調書の内容と現在の彼女を知る人々との証言は一致せず、社会的存在としての彼女がシステムによって迫害されてきたことが分かる。リスベットから制裁を受けた男たちがレイプの被害者のように描かれているのは特徴的。17歳の少女を買春する男たちと、同じく17歳の少女の誘惑を振り切るミカエルの対比。ミソジニックな男性刑事により犯人と決め付けられるリスベット、男性の同僚の裏切りにより捜査から外される女性刑事等、女性の不利な状況が描かれる。『長靴下のピッピ』オマージュあり。
読了日:02月18日 著者:スティーグ・ラーソン

ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士(上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士(上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)
ミカエルらリスベットを救おうとする陣営(狂卓の騎士)と公安警察内部のザラチェンコ・グループ(通称「班」)の作戦会議が平行して描かれ、対立構造が分かりやすい。疑問だったのは、殺し合ったリスベットとザラチェンコを至近距離の病室に収容している点。シリーズ三作目では、ミカエルの妹でリスベットの弁護士となるアニカ・ジャンニーニ、スウェーデン国内有数の大手新聞の編集長に収まったエリカ・ベルジェ、筋トレマニアの公安警察官モニカ・フィグエローラなど、女性キャラが掘り下げられている。特に編集長エリカの仕事ぶりが詳細に。
読了日:02月19日 著者:スティーグ・ラーソン

ミレニアム3  眠れる女と狂卓の騎士(下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)ミレニアム3  眠れる女と狂卓の騎士(下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)
国家により無能力者扱いされてきたリスベットが、自分の潔白を証明し権利を取り戻すための裁判で、社会的責任を自覚し、いくばくかの社会性を身に着ける過程が描かれる。特に恋敵だったエリカ・ベルジェに手を差し伸べる箇所は感動的だ。リスベットは手記で自分の半生を語るが、「話し言葉」を封印された女性が「書き言葉」により復讐を果たすようで興味深い。作者の死去によりこれ以降の物語は中断してしまったが、リスベットの妹の行方、ミカエルを吹っ切ったリスベットの今後など、気になる。それにしてもミカエルは最後まで自分の本能に正直だ。
読了日:02月21日 著者:スティーグ・ラーソン

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