余白の勝機-『The Witch/魔女』感想

アマゾンプライムで『The Witch/魔女』(パク・フンジョン監督, 2018)を観ました。以下、ネタバレあり(ネタバレありき?)な感想です。

 

これ、めちゃくちゃ語るべき余白のあるお話ですよね。主役が8歳から19歳にジャンプする、オーディション番組でジャユンが何をしたかわざと見せない、という風にほどよく謎を残したまま話を展開することで、観客に想像の余地を残します。作劇の手際がよく、最後まで飽きさせません。べったりとした説明口調ではないので、キビキビした印象を与える映画です。

 

そもそもク・ジャユンはどうしてあの研究所に入れられたのか。

 

どんな人体改造手術を受けたのか。

 

どうやって本物の母親(と妹)の自宅にたどり着いたのか。

 

研究所での生活と脱出には断片的にフラッシュバック的映像が入るのみにもかかわらず、8歳の彼女がどういう「怪物」だったのか、その断片性こそがありありと証明します。周囲の人間が見た彼女の姿が、それだけ恐怖をもたらす存在だったってことで。効果的な省略法が用いられています。

 

俳優に関して言うと、19歳のジャユンを演じたキム・ダミの演技力も素晴らしいのですが、8歳のジャユンを演じた子役のふてぶてしい面構えに目を引きつけられました。あの年齢で、「本当に人を殺せそうに見える」のは只者ではありません。もちろん監督の演出の賜物でもあるとは思うのですが。

 

すでに続編の製作が決定しているようですが、主役はキム・ダミではないようです。

 

クライマックスのアクションシーンからエピローグで実の母を訪ねるまでに少なくとも2ヶ月は経ってそうで、その間に「いろんなところで大暴れした」とのことなので、アマゾンかNetflixはこの余白をドラマシリーズ化すればいいんじゃないですかね、『ジェシカ・ジョーンズ』的な形で。ジャユンと親友ミョンヒの関係性は、『ジェシカ・ジョーンズ』のジェシカとパッツィっぽいです。ミョンヒが「魔女」というあだ名で呼ばれるジャユンに寄り添う様子に、強烈なシスターフッドを感じました。