『仮面劇場』

1978年毎日放送東宝製作全4回。

 

38年『サンデー毎日』連載が初出、底本は75年の角川文庫版。

 

原作には金田一は登場しないが作者の了解を得て脚色したらしい。

 

昭和26年小豆島付近、水葬礼にふされボートで漂っていた美少年虹之助。富豪の未亡人大道寺綾子は眼も見えず耳も聴こえない彼に同情し引き取る。不吉な予感を覚える金田一。その後、箱根や鎌倉と移動する綾子と虹之助の周りで殺人事件が頻発する。

 

印象に残った台詞→「どうしてあの人が犯人じゃないって断言できるんです?」「僕が金田一耕助だからですよ」。むちゃくちゃな理屈だ。

 

 

 

『仮面舞踏会』

1978年毎日放送東宝製作全4回。

 

原作は1962-3年『宝石』、1974年完成して講談社から刊行、底本は1976年角川文庫版。

 

草笛光子がシリーズ二回目の登場。軽井沢。離婚歴4回で、新たに飛鳥忠熙との結婚を控える女優鳳千代子。かつて彼女の夫だった男達が、次々と何者かに殺害される。

 

結婚がテーマだからか、やたらと金田一の恋愛ステータスが云々される(日和警部によると「金田一さんには恋愛経験がない」らしい)。

 

金田一金田一で二度も母親の話をして、母離れしてない節が。

 

かと思えば、やたら心変わりの早い青年も出て来る。

 

 

 

『悪魔が来たりて笛を吹く』 上巻

1977年毎日放送製作全5回。

 

原作初出は1951-3年『宝石』連載、底本は1972年角川文庫版。

 

天銀堂で、偽衛生局員が伝染病の予防と称し社員に青酸カリを飲ませ殺害、宝石を盗む事件が発生。生存者の証言で元華族の子爵椿英輔が疑われる。英輔は長野県の山中で自殺するが、家族が砂占いで降霊を試みた夜、英輔らしい人物が屋敷に現れ、叔父の玉虫伯爵が殺害される。

 

伯爵のセクシーな愛人(谷間の見える赤いドレス!)菊江役の中山麻里と、男性依存症的な英輔の妻(金田一にさえしなだれかかる)秋子役の草笛光子の存在感が印象に残る。

 

 

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『犬神家の一族』下巻

三人娘、特に年長の松子が抱く父への復讐心が露になる。

 

京マチ子演じる松子が佐兵衛の肖像画の前である物を燃やすときに見せる笑みが凄絶な美しさ。終盤のこの人は、画面越しに麝香の匂いが香ってくるような妖婉さだ。

 

金田一は関係者をしつこく尋問するだけで、あまり犯罪の予防に役立っていない気がする。彼の役割は佐兵衛の血脈に流れる呪いを解くことがメインのよう。

 

この探偵は東京からやってくるし、ある人物は最後、「東京で働こうと思って」と言う。そこは当時の地方在住者にとって、しがらみに囚われた地域社会から逃れる場所だったのか。

 

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『八つ墓村』 下巻

「通りすがりの不審者」として登場する古谷金田一の飄然とした佇まいがいい。

 

葬式の場面で出て来る風呂吹き大根が美味しそう。

 

村人達が辰弥を犯人と決めつけ山狩りする描写、落ち武者を惨殺した4世紀前とあまりメンタリティが変わってないようで興味深い。

 

最後、新聞記事で知らされるある災害の顛末は悲惨。田舎に代々伝わる財産に執着した者は身を滅ぼすのか。しかしあくまで傍観者である金田一のカラッとした笑顔にすべてをチャラにされた気分になる。

 

ところで、このシリーズは都会ー田舎の移動を黒煙を立てて走るSLで表象することが多い。

 

 

 

『八つ墓村』上巻

1978年毎日放送大映京都・映像京都製作全5回。

 

原作は1949-50年『新青年』(廃刊)、1950年-51年『宝石』連載、底本は1971年角川文庫版。

 

横溝正史シリーズIIの第一作目。昭和24年神戸。寺田辰弥は田治見家の財産を継ぐために生地八つ墓村へ戻る。そこは380年前に毛利元就の政敵が落ちのび、報償金目当ての村人達に惨殺された土地だった。しかも、26年前には愛人鶴子に逃げられ発狂した要蔵が、30人以上の村人を殺傷していた。

 

村を上空から映した雪景色に禍々しい語りと音楽がかかるアヴァンタイトルが素敵。

 

 

 

『悪魔の手毬唄』 下巻

岡山県の山奥にある鬼首村において3日連続で発生した殺人事件と、20年前の詐欺師恩田幾三による青池源治郎殺害事件の真相が明らかになる。

 

疑問だった点→恩田幾三はメガネをかけたまま何人もの女性と同衾していたのか。

 

「腰の曲がった非力な老婆」が怖く撮れるかどうかがポイントだと思うが、成功していると思う。

 

犯人の姿を明かさないまま種明かしを丸々一回分行うのはきついと思うが、何とかやり遂げていた。

 

夜の暗闇に浮かぶ青年団の捜索隊のかがり火とワイシャツの白が美しい。

 

東京へ行く=因縁から逃れる/上京=悪魔払いの構図がここでも。