"Retreat, Hell!"−『世界侵略:ロサンゼルス決戦』感想

渋谷シネパレスで、『世界侵略:ロサンゼルス決戦』を観てきました。
(Dir. Jonathan Liebesman, World Invasion: Battle LA, United States, 2011.)

宇宙からの侵略者たちとロサンゼルスで戦うアメリ海兵隊の一小隊内のドラマを描くというもの。以下、内容に触れています。

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アーロン・エッカート演ずる軍人ナンツは以前、一小隊を任されていたのですが、作戦行動中に部下を死なせたということで、二等軍曹に降格させられてしまいました。彼は新しい小隊に配属されるのですが、自分よりも年下で、大学出たてのエリート中尉の下につくことになります。

果たしてナンツが小隊内で仲間の信頼を勝ち取ることができるのか、そしてサンタモニカの警察署から無事市民を救い出すことができるか、というのが物語の主軸になります。

印象としては、米軍に関してかなり好意的な描写が目立ちます。

・救助した男の子と軍隊式敬礼を交わすナンツ。
・「市民の命が最優先だ!」と言うナンツ。
・小隊内の兵士ひとりひとりの識別番号を覚えているナンツ。
・スタンド・プレーすれすれの蛮勇と機転で仲間を救いながら、かつ宇宙人も殺すナンツ。
・命からがら脱出したにもかかわらず、休養よりも銃を取って戦う方を選ぶナンツ。

なんてヒロイックなナンツ! 兵士の鑑!

…うん、宇宙人はどこに?

捕まえた宇宙人兵士を生体のまま解剖する場面など、ダイレクトにコンタクトする場面もあるにはあります。
しかしそれは、急所を探すためにさばくだけで、どうも宇宙人そのものに対する関心が感じられないのです。

『エイリアン』シリーズにあったような、「未知の生物に対するセンス・オブ・ワンダー」がない。

すでに「宇宙人=侵略者」という図式が所与のものとしてあり、その代わりに映画の焦点が「一小隊内の兵士たちの生き様」や「戦い続けることの意味」になってしまっています。

「侵略してくるのが彼らである必要はあるのだろうか?」と思ってしまうような、宇宙人の存在感のなさ。地球の米軍の海兵隊の一小隊に視点が固定されていることからくる息苦しさ。「宇宙人との戦い」を描くのに人間側のシリアスなドラマを盛り込んだことからくる違和感。

しまいには、もしも宇宙人が侵略してきたならば、アメリカ米軍がどのように戦うかのシミュレーションを見せられているような気分に…あ、もしかしてアメリカ政府は、すでに宇宙人が侵略してくることを想定し、全世界の観客にあらかじめ心の準備をさせようとしているのかも!(←映画脳)

結論:もっと宇宙人と絡もうYO!

しかし、劇中繰り返される"Retreat, hell!"(退路はナシ!)の唱和には参加したくなりました。

その名前の映画もあるみたいです。朝鮮戦争時の海兵隊を描いた1952年の映画とのことです。機会があったら観てみたい。

You Can't Stop the Marines [VHS]

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追記:

ミシェル・ロドリゲスさんの兵隊姿はよかったのですが、『マチェーテ』や『ワイルド・スピード』シリーズにあったデンジャラスな魅力が引き出されてなかったのは残念。ずっとヘルメットかぶってたしなぁ…。