エディとヴェノムのバディ感がいい-『ヴェノム』

ライフ財団の創立者ドレイクが派遣した宇宙船が、シンビオートという生命体を地球に持ち帰る。彼を探っていたジャーナリスト、エディ・ブロックの身体に生命体の一つ、ヴェノムが入り込む。


ヴェノムとエディの絆が深まる理由が「身体の相性がよかったから」(相性が悪いと寄生された方もした方も死ぬ)以外にあまりなく、ヴェノムが人間と地球側についた理由が「LAの綺麗な夜景を見たから」以外に描写されておらず、しかもその描写も極めてあっさり。エンドロールで監督がルーベン・フライシャーと知り、「この人の映画、あんまり感情描写に深みがないもんなあ」(例: 『ゾンビランド』)と納得した。MVやコマーシャルを多く手がけているだけあって、テンポ感はよい。


ドレイクに寄生するライオットと自分の違いをヴェノムが台詞で説明するのだが、シンビオート内での地位や思想の違いをもっと掘り下げて描写した方がよかったのではないか。


ヴェノムに取り憑かれた演技をコミカルに演じるトム・ハーディの芸達者ぶりに助けられている面がある。いきなり地球外の生命体に「俺とお前は似ている」と言われ、共存するのに無理がまったくないのもトム・ハーディという俳優のキャラに依拠するところが大きい。


とは言うものの終盤には「がんばれヴェノム!がんばれヴェノム!」と応援したくなる高揚感がある。本編は92分くらいと短いし、さっと観られるのでいい映画だと思う。エディとヴェノムのバディ感はここ数年観た映画で最高。


エンドロールの合間にウッディ・ハレルソンのカーネイジが登場したり、『スパイダーマン スパイダーバース』の映像が入ったりと、本編が終わってからが長い。


追記: 配偶者によると、ヴェノムがライオットを裏切った理由は「人間の愛」ということらしい。エディがアニーを愛していたり、エディが警備員を「食うな!寝ないで働いて家族のために頑張ってるんだ」と言ったり。エディの愛や思いやりに触れ、「人間も悪いもんではないな」と思ったのではないかということ。そこらへんの機微を読み取れなくて悪かったフライシャー(反省)。フラッシュバックや分かりやすい因果関係の描写がないと分からないというのは鑑賞者として怠慢だった。


追記2: レストランの場面でジェイソン・ステイサムカメオ出演しており、得した気分になった。