佐藤二朗だけ観ていたい-『銀魂2-掟は破るためにこそある』

佐藤二朗だけ延々と観ていたかった。 前半はギャグ兼キャラクターショーで後半はシリアスに、というのは漫画原作邦画の定型なのかしら。1時間目は楽しめたが、2時間目は「侍とは…」「組織とは…」みたいな精神論を煮詰めた台詞付きバトルが続いて少々きつかっ…

異性愛の枠物語の中のBL-『翔んで埼玉』

麻美麗役のGACKTはもともと魔夜峰央作画っぽいので違和感ないだろうと思っていたが、壇之浦百美役の二階堂ふみも意外とはまっていた。台詞回しにキレがあった。 結納のために東京へ行く熊谷市の家族が、車中で耳を傾ける埼玉県のローカルFM・NACK5。そこで流…

燃えるような画面の黙示録的作品-『マンディ 地獄のロード・ウォーリアー』6

VHSのパッケージが似合いそうな作品。色調も画質も、そして字幕まで80年代に寄せてきている。 1983年、カリフォルニア州東部にあるモハーヴェ砂漠のシャドウ・マウンテンが舞台。 エピグラフは、2005年に刑が執行されたテキサス州死刑囚の最期の言葉。 「黒T…

フラーケンのポテンシャルは女性の可能性と同義である-『キャプテン・マーヴェル』

ボスのヨン・ロッグに何度も感情を抑えるよう指示されるヴァース。仕事場で女性がよく言われることと同じだ。 見知らぬバイカーに「俺のために笑ってくれよ」と言われるヴァース。これも女性が社会に出た時に対男性場面において期待されることを描いている。…

小声で告げられる終わり-『アベンジャーズ/エンドゲーム』

『アヴェンジャーズ』フェイズ3、「インフィニティ・サーガ」最終作の印象に残った場面と断片的な感想のメモ。 ホークアイの家族がサノスの指パッチンで消されるところから始まる。5年後に家族を失ったホークアイと、ペッパーポッツとの娘モーガンをもうけた…

仕事に大事なのは準備-『イコライザー2』

前回に続き、マッコールさんの手際の良さ、無情ぶり、義理堅さが印象に残る。 仕事に大切なのは準備、というのはおそらく彼のオフィシャルな死後ルーズに過ごしてきたであろうチームの面々とマッコールさんとの佇まいの差を見れば明らか。 嵐の中で過去の部…

史上最悪のヴィランの凡庸化-『ミスター・ガラス』

「シャマラン、なにやってるん? 私のミスター・ガラスに何してくれてるん??」と詰問したくなる腹落ち感のまったくないエンディング。 「世界にスーパーヒーローの実在を知らせるために」自分の命まで差し出すヴィラン…泣ける。「でもミスター・ガラスはそ…

自分のために料理して食べる場面があるのはいい映画-『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』

マンソンファミリー: 「テレビであたいらに殺しを教えた奴らを殺すんだよ!」 クリフ・ブース: 彼らをほぼ素手で撲殺。 LSDで飛んだ頭で薄笑いをしながら、"You're real?"と聞いてからのタガが外れたような戦闘シーン。現実の悪意がテレビの中の暴力に返り討…

エディとヴェノムのバディ感がいい-『ヴェノム』

ライフ財団の創立者ドレイクが派遣した宇宙船が、シンビオートという生命体を地球に持ち帰る。彼を探っていたジャーナリスト、エディ・ブロックの身体に生命体の一つ、ヴェノムが入り込む。 ヴェノムとエディの絆が深まる理由が「身体の相性がよかったから」…

ピーター・ディンクレイジの色気が凄い-『メリッサ・マッカーシーinザ・ボス 世界で一番お金が好き!』

インサイダー取引で逮捕され無一文となった投資家が、元秘書のファッジ作りの才能とガールスカウトのファッジ売りシステムに目をつけ再起を図る。 メリッサ・マッカーシーのテンポ感がいいのはもちろん、脇を固めるキャシー・ベイツの貫禄やピーター・ディン…

急潜航するときの姿勢がいい-『ハンターキラー 潜航せよ』

アメリカ対ロシアの話であるが、イギリス映画。 ドン・キースとジョージ・ウォレスが2012年に発表した小説"Firing Point"に基づく。 ロシアの潜水艦が内部から爆破され、救いに向かったアメリカの潜水艦タンパ・ベイも魚雷で沈められる。 ロシアの国防大臣ド…

精神病院のルックはいいが新味がない-『コンジアム』

広告収入目当ての動画生配信を行うために昆池岩(コンジアム)精神病院へ潜入した若者たちが直面する恐怖。 韓国版『グレイブエンカウンターズ』という趣。『ブレアウィッチ・プロジェクト』の影響を感じさせるところもある。 政治犯、凶悪犯を矯正する施設と…

ワイドショーのぶら下がりインタビュー的謎解きシーン-『三つ首塔』

1977年毎日放送・東宝製作全4回。 原作は1955年『小説倶楽部』に連載、底本は1972年角川文庫版。 相続人の数が減るごとに一人当たりの遺産分配額が増えるという遺言が引き起こす連続殺人。SM、仮面舞踏会など都市の裏社会を描く前半と、三つ首塔にまつわる因…

『未解決事件 File 07 警察庁長官狙撃事件』

録画してたNHKの『未解決事件 File 07 警察庁長官狙撃事件』を観た。 1週目はドキュメンタリーで、本人の書簡を含むさまざまな証拠から真犯人とされる中村泰の実像に迫る。 2週目はイッセー尾形が中村、國村隼が中村の専従捜査班だった刑事原雄一を演じる再…

『BBC 世界に衝撃を与えた日―15―~英国王妃アン・ブーリンの処刑とエドワード8世の退位』

2003年。 1536年、アン・ブーリンが処刑されてからちょうど400年後の1936年にエドワード8世が退位したという繋がりでこの二つの事件が併置されている。 前半では、アンの処刑前日と当日の様子が、処刑人ウィリアム・キングストンの動向から語られる。 ヘンリ…

"Great Queens of England: Boudicca of the Iceni"

1994年。再現映像付きドキュメンタリ。 イケニ族の生活と反乱に至るまでの経緯がある程度解説されている。 彼らの居住地は現在のイーストアングリアで、鍛冶屋や職人もおり、近隣部族の中では商業上有利な立場を占めていた。 43年のローマ支配後(特にネロの…

"Boudicca: Warrior Queen"

2006年。 西暦60年か61年頃、夫の死後、ケルト人部族を率いローマへの反乱を起こしたイケニ族の女王ブーディカについてのドキュメンタリー。 ローマ人歩兵がいかに統率が取れていたか、ケルト人が彼らと比べるといかに野蛮だったかの対比が多く、彼女につい…

『ひぐらしのなく頃に』

2006年4月-9月放映。全26話。 原作は2002年から2006年にかけて発売されたホラーゲーム(ディレクター竜騎士07)。 昭和58年夏の雛見沢という架空の村落が舞台。そこでは「オヤシロ様」を信仰の対象とし、綿流しという儀式を行うが、毎年1人が行方不明になり、1…

"The Bletchley Circle" Series Two

2014年。2話完結の物語2編。 戦時中ブレッチリー・パークで任務についていた女性たちが、暗号解読のスキルを活かし無実の罪で服役する元同僚を救おうとしたり、戦後1954年まで続いた配給制の時代に暗躍するマルタ島のギャングを追い詰めたりする。 映像記憶(…

"The Bletchley Circle" Series One

2012年。 第二次世界大戦中、ブレッチリー・パークの政府暗号学校に勤務していた4人の女性たちが1952年に再会し、婦女連続強姦殺人犯を追う。 夫と子供達がいる「普通の主婦」は一人だけで、後の三人は司書、カフェ店員、DV夫に悩む若い妻と、幸福な女性の…

"Who Took the Bomp? Le Tigre on Tour"

2011年アメリカ。 キャスリーン・ハナ、ジョアンナ・フェイトマン、JDサムソンのフェミニスト・エレクトロニックバンド、ル・ティグレによる2004年から2005年の数カ国にまたがるツアーを追ったドキュメンタリー。 主にライヴ映像、プロモーション風景、イン…

"Don't Need You: The Herstory of Riot Grrrl"

2006年。1990年代米国のインディ・シーンにおけるライオット・ガール・ムーヴメントの起源と展開を探る。 出演はブラットモービルのアリソン・ウルフ、ビキニ・キルのキャスリーン・ハナ、ヘブンズ・トゥー・ベッツィのコリン・タッカー、フガジのイアン・マ…

『魍魎の匣』(アニメ版)

2008年日本テレビ系で放送。全13話。 面白くて一気見。 国分寺、武蔵小金井、町田と、東京の各所で物語が展開する。 最先端科学が登場人物たちの心に植え付けるのは魍魎、複数の物語の解きほぐしは憑き物落とし、体およびテレビは箱といった比喩が効いている…

『江戸川乱歩「悪魔の紋章」より 死刑台の美女』

1978年テレビ朝日。土曜ワイド劇場で放送。江戸川乱歩『悪魔の紋章』に基づく。 川手とその娘の三姉妹へ殺人予告電話がかかる。明智小五郎は犯罪学者の宗方博士に代わり香港の国際学会に参加予定だったので、宗方に川手一家の保護を求める。川出には遺産分配…

『真珠郎』

1978年毎日放送・大映京都・映像京都製作全3回。 原作は1936-7年『新青年』、底本は1974年角川文庫版。 原作には金田一は登場しないが作者の了解を得て脚色したらしい。 昭和23年、城北大学の講師乙骨と椎名は、信州岩田村の鳥越湖畔にある元生物学者鵜藤の…

『悪魔の手毬唄』 上巻

1977年毎日放送・大映映画・映像京都製作全6回。 原作は1957-9年『宝石』連載、底本は1971年角川文庫版。 昭和27年、鬼首(おにこべ)村に、村出身のグラマー歌手オーロラゆかりが凱旋することに。村の青年団達は歓迎ムードに湧くが、その日から鬼首村に伝わる…

『悪魔が来たりて笛を吹く』 下巻

悪魔の紋章の由来と、誰がほんとうの悪魔であったかが明らかになる。 杉本一文によるフルートを吹く悪魔のイラストがCM前に入る仕様なのだが、このイラストが物語最後に判明する悪魔の正体にそっくりであるのがニクい演出。 悪魔の紋章は、『オーメン』(1976…

『仮面劇場』

1978年毎日放送・東宝製作全4回。 38年『サンデー毎日』連載が初出、底本は75年の角川文庫版。 原作には金田一は登場しないが作者の了解を得て脚色したらしい。 昭和26年小豆島付近、水葬礼にふされボートで漂っていた美少年虹之助。富豪の未亡人大道寺綾子…

『仮面舞踏会』

1978年毎日放送・東宝製作全4回。 原作は1962-3年『宝石』、1974年完成して講談社から刊行、底本は1976年角川文庫版。 草笛光子がシリーズ二回目の登場。軽井沢。離婚歴4回で、新たに飛鳥忠熙との結婚を控える女優鳳千代子。かつて彼女の夫だった男達が、次…

『悪魔が来たりて笛を吹く』 上巻

1977年毎日放送製作全5回。 原作初出は1951-3年『宝石』連載、底本は1972年角川文庫版。 天銀堂で、偽衛生局員が伝染病の予防と称し社員に青酸カリを飲ませ殺害、宝石を盗む事件が発生。生存者の証言で元華族の子爵椿英輔が疑われる。英輔は長野県の山中で自…